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初めての自作スピーカー作り方講座 基礎編V

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エンクロージャーの構造あれこれ


スピーカーには、フルレンジとマルチウェイの方式の他に、エンクロージャーの構造の方式の違いがあります。

音の特性として、高音はまっすぐ進むのですが、低音であればあるほど回り込む性質があります。スピーカーとして音を再生するにあたり、やっかいなのはこの低音です。
スピーカーユニットをエンクロージャーに取り付けずに、そのままケーブルに繋いで音を出したとしましょう。
振動板はズンズン動いているのに、耳に入るのはチャカチャカした高音だけです。
これは次のようなことです。
ユニットが低音を再生しようとして振動板をズン、と前に動かします。すると振動板の前の空気にその振動が伝わって、音として低音が作り出されます(ズン、のタイミングでプラス圧の振動音波)。ここまでは問題ありません。
そして、ズン、と前に動いた振動板、その裏側でも同じ振動で音が作り出されます。ただし、こちら側の音はズン、のタイミングで振動板が引っ込んでいく形になりますので、ちょうど振動板の正面とは逆相のマイナス圧の振動音波が作られることになります。
そうして、それらが回り込み、お互いにぶつかって消えてしまうのです。
せっかく低音を作り出してもそのままだと消えてしまうので、スピーカーの構造としては、まずこの低音をどう出してやるかの戦いとなります。

まずひとつの解決策として、平面バッフルと呼ばれるものがあります。
これは折角の低音が回り込んで打ち消しあわないように、壁をつくってやるという発想から生まれたものです。
形としては単純、平板に穴をあけてユニットを取り付ける、というもの。前の音と後ろの音はこの平板で遮蔽され、打ち消されることはありません。
箱鳴りもなく、非常に開放的な音になりますが、取り付ける平板の大きさがそのまま再生できる低音の限界となります。
実用的な低音を出すには、非実用的なほど大きな平板にしなければならず、あまり用いられることはありません。

次いで、後面開放型と呼ばれるものがあります。
これは大きくなりすぎる平面バッフルの上下左右を後ろに折りたたむ、というもの。かなりコンパクトになります。
理論的には、折りたたんでも再生できる低音限界は変わりませんので、平面バッフルの欠点をかなり改善したものといえます。
ただ、それでもやはり、充分な低音を求めるとサイズが大きくなりすぎるという欠点があります。

そしていよいよ密閉型の登場です。
後面開放型の後面を塞いだ最終形で、平たく言うと「箱型」です。箱として密閉していますので、ユニット前後の低音が打ち消しあうことはありません。
箱の中に閉じ込められた空気を、振動板が振動する際のサスペンションとして活用するアコースティックサスペンションという考え方も生まれ、現代のスピーカーの基本とも言える形です。
音の傾向としては緻密で素直に鳴るものが多いのが特徴です。

そして、現在市販スピーカーで主流となっているのが、バスレフ型です。
バスレフとはバス・レフレックスの略で位相反転型などとも訳されますが、単純に言うと、共鳴を利用して低音域の増強を図っている方式のことです。
瓶の口に息を吹き込んでホーホー鳴らす、アレをスピーカーにも作ってあげるといえば判りやすいでしょうか。よくスピーカーのエンクロージャーには丸い穴が空いていますが、あれはその後ろにダクトがついていて、「ホーホー」の原理で低音を増強している印です。
「ホーホー」は正確には「ヘルムホルツの共鳴」と言い、ダクトの断面積と長さで共鳴する周波数が計算できます。密閉型で再生できる周波数のすぐ下ぐらいの周波数を狙ってバスレフダクトを作ってやれば、実質的にスピーカーとしての再生低音域を広げることが出来ます。

その他、バックロードホーンという構造もありますが、これは故・長岡鉄男氏が多くの設計を残し、未だに国内外共にファンが多い形です。振動板が軽い割に巨大なマグネットを持つ専用のユニットを使いますが、これはそのままだと中高域は非常にハイスピードで活気溢れる音ですが、低域は不足気味になってしまうユニットです。これを、ユニット背後に長く折りたたんだホーンを持つ特殊な設計のエンクロージャーで低音を補強してあげると、一度聴いたら癖になる、市販品にはない素晴らしいスピーカーになります。皆さんもぜひ一度はお試しを!

他にも種類はありますが、まずは上記を知っておけば充分です。
さあ、実際の製作に取り掛かりましょう!


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