本文へスキップ

"常に未完成の家" DIY的家作り LOG note

初めての自作スピーカー作り方講座

DIY的家作り LOG note > スピーカーDIY > 初めての自作スピーカー作り方講座 バスレフ型


バスレフ型エンクロージャーの設計・容積計算方法


前回の「自作スピーカー作り方講座 密閉型エンクロージャーの設計」では、密閉型エンクロージャーの特徴と設計方法について説明しました。今回はバスレフ型エンクロージャーについて解説しようと思います。密閉型ではうまく設計できないようなユニットも、このバスレフ型なら上手に設計できることでしょう。

バスレフ型は密閉型に比べて箱の容積の自由度が高く、またより低い周波数まで(充分なレベルで)再生できるというメリットがあるため、市販スピーカーのほとんどがこの方式を採用しています。密閉型ではただ箱に閉じ込めていたユニット後方への音波を、バスレフ型は(ヘルムホルツの共振を使って)積極的にダクトから放出させるという効率のよさも見逃せません。

さて、そんなバスレフ型ですが、設計にあたってはエンクロージャーの容積に加え、バスレフダクトの設計をしてやればOKです。
まず、設計に必要なユニットのパラメーターは以下のとおりです。

エフゼロ 最低共振周波数−通常エフゼロ、そのユニットの振動系部分が最も低く共振する周波数。ヘルツ(Hz)で表示される。foの表記がないときはFs(Resonance frequency)の数値で代用可能。
キューゼロ 共振尖鋭度−通常キューゼロ、foにおける共振の鋭さを表している指標。大きいと低音が出やすいが、制動不足になりがち(モコモコボーボーとした音、低音の立ち上がり/立ち下がりが悪い)となり、一般的には1ぐらいまでが良いスピーカーとされる。Qoの表記がないときはQts(Total Q factor)の数値で代用可。
エムゼロ 等価質量−通称エムゼロ、ユニットのうち振動する部分の質量。グラム(g)で表示される。コーンだけでなくボイスコイルやダンパーの質量に加え、空気抵抗も含まれている。moの表記がないときはMms(Moving mass)の数値で代用可能。
実効半径 実効振動半径。そのユニットの口径とは異なり、音を出すために動いているコーンなどの部分の半径。エッジの一部も含まれる場合が多い。aの表記がないときはSd(Effective piston area/実効振動面積)から逆算する。aとSdは、aが半径でSdがその円の面積という関係。Sd=a×a×3.14。

fo(エフゼロ)、Qo(キューゼロ)、mo(エムゼロ)、そしてa−−密閉型同様、この4つをチェックすれば大丈夫です。
まずはエンクロージャー容積ですが、基本計算式は実は密閉型と同じです。
スピーカー自作 密閉型エンクロージャー計算式

密閉型の設計ではこの式のαについてはQoを元に別式で算出しましたが、バスレフ型では設計の自由度が高く、α=0.5〜3.0の間で決めてやればそれなりにまとまった音のスピーカーになってくれます。使用するユニットの口径を踏まえ、一般的で実用的なサイズにするにはα=1〜2程度に設定するのがよいでしょう。

エンクロージャーの容積が決まったら、次はバスレフダクトの設計です。

まずは、ダクトで共鳴させる周波数(=チューニング周波数・fd)を算出します。これはユニットのQoの値によってfoを増減させて導き出します。下表を元に計算してください。

Qo 0.20 0.22 0.25 0.28 0.30 0.32 0.35 0.38 0.40
fd fo×1.80 fo×1.60 fo×1.50 fo×1.30 fo×1.20 fo×1.20 fo×1.10 fo×1.00 fo×1.00
Qo 0.42 0.45 0.48 0.50 0.52 0.55 0.58 0.60 0.62
fd fo×0.90 fo×0.90 fo×0.80 fo×0.80 fo×0.75 fo×0.70 fo×0.70 fo×0.65 fo×0.65

次いで、ダクトの開口面積(S)を決めます。
開口面積(S)はユニットの実効振動面積の0.2〜1倍程度とします。
実効振動面積はa×a×3.14、またはユニットスペックにSdの記載がある場合はその数値を使用し、その0.2〜1倍程度で計算しますが、特に小型エンクロージャーの場合は0.2倍ですら箱に比して大きすぎる場合があります。0.1倍程度まで小さくしても良いですが、その分、低域拡大効果は少なくなるので注意しましょう。

ダクトの開口面積(S)が決まったら、最後にダクト長さ(L)の計算です。
このダクト長さは、ダクトのチューニング周波数(fd)とダクト開口面積(S)はもちろん、内容積(V)も関わってきます。
計算式は
バスレフダクト長さ計算式

さて、以上でバスレフ型エンクロージャー設計に必要な、内容積およびダクト面積×長さが出てきました。
各数値を眺めてみてください。
最後に計算したダクト長さはエンクロージャー寸法に収まる長さでしたか?
時折とんでもない長さが導かれてきますが、バスレフ型の設計の場合、一発で計算を終えることはありません。
箱容積計算の際のαの数値(0.5〜3.0)やダクト開口面積(S・ユニットの実効振動面積の0.2〜1倍)を調整しながら、それぞれ適正な範囲で収まるようバランスを取っていきましょう。

なお、ダクト開口の形状は丸でも正方形でもよくて、さらに言えば2分割してダクト2本でも構いません。
スリットダクトにするという手もありますが、細いダクトは空気の抵抗が大きくなります。風切り音が大きくなったり低音の量感が減ったりというデメリットもありますが、ピーク感が減って素直な特性に聞こえる傾向もあります。デザイン的にも悪くはないので、お好みで試してみてください。